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2003年以降も低成長が続くとすれば、3%成長が続いた場合にくらべて、2013年までの10年間でさらに2300兆円、合わせて3000兆円を失うことになる。
30年代のアメリカの大恐慌で失われたGDPは3年分といわれている。 とすると、日本経済は90年代以降、大停滞の状況にあったといってよい。
そして、90年代以降の大停滞を説明するということは、実質GDPが700兆円以上減少したことを説明するような大きな要因を見出すということでなければならない。 これは日本だけの損失ではない。
2013年までに21000兆円を失うということは、日本がそれに応じてアジアや世界に市場を与えることができず、海外投資をすることができず、世界の経済発展に貢献することができないということなのだ。 なぜ、このようなことが起きたのだろうか。
90年代の日本経済の停滞は、よって生じたというのがの主張である。 そして、その誤りが、いかなる経路を通じて90年代以降の大停滞をもたらしたのかについては、第2章以下で分析する。
大停滞を説明する議論はほかにも数多い。 この議論は、「構造問題説」と「政策問題説」と「バブル反動説」とに分けられる。
「構造問題説」とは、その中上身はあいまいだが、構造問題があるがゆえに日本は成長できないという説である。 「政策問題説」とは、80年代末以来の金融政策の誤り、財政政策の誤り、金融不良債権処理の誤りなど、バブルの後始末の不手際が大停滞をもたらしたという説である(私はこのうちの金融政策の誤りを決定的な要因だと考えている)。
また、80年代末バブルの反動説だけでは説明しきれない「政策問題説」のうち、過大な金融緩和が生み出したバブルがその後の大停滞をもたらした、という説について考えてみよう。 金融政策の誤りはさまざまな経路で経済を混乱させる。

それについては以下で議論として、ここではいちばん単純な、「バブルだったから」という議論のみについて考えられた、「構造問題説」と「バブル反動説」は誤りである。 これらの説が誤りだということは簡単に説明できるので、ここで行うことにする。
金融政策が問題だったのか、財政政策が問題だったのかはあとで議論し、金融政策の誤りが本質的な要因だったことを明らかにする。 さらに、金融政策の誤りがどのような経路で90年代以降の大停滞をもたらしたのか、それがなぜ長期にわたって続いたのかを説明する。
90年代以降の大停滞を検証すると妙な値上がりした。 しかしこの過大な金融緩和によって引き起こされたバブルの反動があるかぎり低成長は必然だという「バブルだったから」という説明は、80年代後半の過大な金融緩和が地価や株価の上昇というバブルをもたらし、バブルの崩壊によって90年代の大停滞が生じたというものである。
要するに、90年代の日本経済が停滞したのは、それ以前のバブル崩壊によって巨額の損失を被ってしまったからだというのである。 もちろん、バブルが80年代末の実体経済を嵩上げし、それが90年代はじめの実体経済を停滞させたのは事実である。
たしかに、バブルの規模は大きい。 80年から現在までの地価と株価それぞれの総額をあらわしたものである。
85年末に1050兆円しかなかった地価総額は、90年末には2457兆円へと1407兆円も値上がりした。 また、85年に242兆円でしかなかった株価総額は、89年末には890兆円へと648兆円もし、このような上昇はバブルにすぎず、その後暴落し、2001年末にはそれぞれ1457兆円と332兆円になってしまう。

すなわち、株と土地を合わせて、85年末からピーク時にかけて2055兆円値上がりし、その後2001年末までに1558兆円値下がりしたことになる。 数字は印象的だが、バブルの反動自体は、その後10年以上も続き、今後も続くであろう大停滞を説明できるほどのものではない。
まず、バブルが資産の取引にすぎないものだったとしよう。 バブル以前に100億円だった土地を300億円で買って、バブルの崩壊後、その土地の値段がもとの100億円になったことが損失なら、一方で、100億円にすぎないものを300億円で売って儲けた人がいる。
バブル紳士が200億円損したのなら、バブルで売り抜けた人は200億円儲けているはずである。 損した人の損と儲けた人の儲けを足してみれば総額はゼロなのだから、その後10年間も経済の停滞が続くはずがない。
得をした人がさらにつまらない土地を高値で買えば、得した人はいないということになるかもしれないが、それでもやはり、つまらない土地を高値で売って儲けた人がどこかにいるはずである。 もちろん、政府が税金をとって儲けたのも事実だが、税金は儲けのほぼ3割なので、残りの7割を儲けたままの人がやはりどこかにいるはずだ。
この理屈に承服できない人は、次の例を考えてほしい。 バブル紳士がニューヨークの一等地にあるビルを300億円で買ったが、その後もちこたえることができなくなり、買値の3分の一で売却することになった。
新たな買い主はもとのアメリカ人オーナーだった。 さて、日本のバブル紳士は200億円損したが、もとのオーナーは200億円儲かったのではないか。
損と得は足してみればゼロのはずである。 儲かったのはアメリカで、損をしたのは日本だから、この例であれば、その後10年、日本で不況が続いてもおかしくはない。
しかし、たいていの場合、バブルは日本の土地をめぐっての話である。 もちろん、バブルの反動が90年前後の経済変動のかなりの部分を説明できることを否定するわけではない。

損と得とを合わせてみればゼロであっても、損をした人は意気消沈し、得した人もしばらくはおとなしくしているということはあるかもしれない。 私がいいたいのは、バブルの反動説は、90年から10年以上も続く大停滞を説明するには力不足ではないか、ということだ。
すなわち、価格が下がりきってしまえば所得分配の問題にすぎなくなるのだが、さらに下がるという期待が生まれれば、支出が削減され、停滞を長引かせる。 ここに債務がからめば、価格の低下期待が経済を停滞させる程度はさらに大きなものになるだろう。
実際に、株も土地も、バブルの崩壊後はトレンドとして低下していった。 株は上下変動が債務デフレの影響は大きいただし、説明できるかもしれないという別の議論もある。
自分のお金を失っただけなら、しばらくおとなしくしているだけですむかもしれないが、借金をしてバブルに入れ揚げれば、ショックが増幅される可能性がある。 銀行から債務返済を求められた企業は、自らの生産物や資産を売り払って、なんとかキャッシュをつくろうとする。
そうなると、ストック価格が低下するだけでなく、フローの生産物の価格も低下する。 フローの価格が下がれば、ストックの価格も下がるだろう。
債務の返済を迫られる企業は、資産を売却し、その生産物を処分して、キャッシュを生み出すために必死の努力を続ける。 これはさらに、資産価格と生産物の価格を低下させることになる。
そして、価格がさらに下がるという期待が一般化すれば、支出は先送りされ、デフレーションの過程はさらに続く。 これがIであったが、土地は継続的に下落していった。

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